年配の男性の顔



年配の男性の顔

のイラスト

シンプルで落ち着いた印象の年配男性の顔のイラスト。幅広い用途に活用でき、ビジネスマンや教育現場、地域の活動をイメージした資料にいかがでしょうか。

2025/04/29 運営者みきとのエッセイ

医者だったおじいちゃんに、歯はなかった。キャラメルが好きで、いつも食べていたから虫歯になった。

だから、いつもモグモグした口だった。

祖父は優しかったことを覚えている。遠方に住んでいたので、たまにしか会えなかった。ゲーム禁止の家庭だったので、ゲームセンターに行ってみたくて祖父にねだって、連れて行ってもらった。

「なんでも好きなゲームやっていいよ」と言われたので、銃で敵を倒すゲームをしたいと伝えたら、「えー、なんだか物騒だよ」と言って、小さなボーリングのゲームを勧められた。本命は銃のゲームだったけれど、仕方なくボーリングのゲームをした。

今ならわかる。それが祖父の優しさだったことを。

電話がかかってきた。僕たちは祖母に何も言わずに、ふらふらと外に出てきてしまったので、「どこにいるの!」と電話の向こうから声が聞こえてきた。

「怒られちゃった」と、おじいちゃんは困った顔をした。

小さかった僕が覚えている、大切なおじいちゃんとの思い出。

もうひとつの思い出は、病床だった。

私が中学1年生のころ、祖父はがんを患った。

それでも祖父は、歯のない優しい顔で、孫の私を可愛がってくれた。旅行雑誌を片手に、病気が良くなったらここに行きたいなって丸印をつけていた。きっと医者だったから、自分の病気についてもよくわかっていただろうに。だけど孫の前では、先の話をしてくれた。

お見舞いに持っていったチョコレートを、亡くなる直前まで食べていた。最後まで甘いものが大好きだった。そうして、祖父は息を引き取った。

家の布団で、冷たくなった祖父が寝ていた。さっきまでいたはずなのに、ここにいない。ここにいるのに、ここにいない。ふわふわした不思議な感覚を感じた。

だけど、優しい顔のおじいちゃんが、また話しかけてくれる気配を部屋に感じた。

葬式の時、「これで最後だから、おじいちゃんにお別れしてきなさい」と母に言われて、棺の前に来たけど、なんだか怖くなって、あまりちゃんと見られなかった。

歯がない、モグモグしたおじいちゃんの顔を、最後にちゃんと見たかった。だけど、目を閉じれば、いつでもあの顔が浮かぶ。

いつか、あんなふうに優しくて、モグモグした可愛らしいおじいちゃんになるんだと、僕は今でもときどき思い出す。

更新日: 2025年04月29日
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